STRATA 3D CXのレイディオシティを使おう
■はじめに
今まで、レイトレーシングを使用することを前提にしたパースの描き方を紹介してきましたが、ここ数年では、パソコンのスピードの進化とともに仕事でもレイディオシティを利用することが多くなってきました。
ご存知かと思いますが、レイディオシティでは反射の光を計算することが出来ますので、ダミーのライトを設置する手間が減るのはもちろん、手動でダミー光源を設置して得られる結果より遥かに高品位なレンダリング結果を得ることが出来ます。
かつてのパソコンではこのレイディオシティを利用するには相当の理解と工夫が必要でしたが、今やクアッドコアCPUが入門用パソコンに用いられ、10万円を切るような価格で十分なメモリを搭載したパソコンが購入出来るようになりました。もはや十分にレイディオシティも実用に堪えるでしょう。
という訳で、遅ればせながらこの講座でも、レイディオシティを前提としたパース講座を始めたいと思います。
■01
まずは簡単な部屋で練習しましょう。シンプルな空間こそ、レイディオシティの恩恵が大きいです。まずは例題のモデルをご覧ください。4m四方で2600mmの天井のなにもない部屋です。椅子だけおきました。ここに今までにもやっているレイトレーシングでの結果を見てください。
設定はスポットライトを4灯、ダミーのスポットライトを4灯、天井に向けてあります。
レンダリング設定はレイトレーシング「RT3 高」で行っています。
あえてあんまりがんばっていませんが、ご覧の通り、これをきれいにするのはなかなか大変です。
この連載用に作成したモデルデータをここでダウンロードできます。
( 注意 ) 下記のデータは、STRATA 3D CX 5.5Jで作成されています。
■02
次に、ダミーのライトを非表示にして、天井からのスポットライトだけを利用、レイディオシティ「RD3 高」の設定です。
レンダリングを始めると、なかなかにがっかりするスピードかと思います。私もここで止めました。
このプリセットのせいで、レイディオシティは使えない、と思っていらっしゃる方が多いのではないでしょうか?
私はそうでした。
この連載用に作成したモデルデータをここでダウンロードできます。
( 注意 ) 下記のデータは、STRATA 3D CX 5.5Jで作成されています。
■03
ここで、設定を変えましょう。詳細設定ダイアログで、ライティングサンプルを100に下げ、キャッシュスレッシュホールドを100に上げました。
まだまだ遅いですが、腹が立たない程度に高速になったかと思います。プリセットの数値での画像と比べても、大差ないです。 ( この結果はiBOOK G4で行っているため、とても遅いです )
この連載用に作成したモデルデータをここでダウンロードできます。
( 注意 ) 下記のデータは、STRATA 3D CX 5.5Jで作成されています。
■04
ライティングサンプルは、面にあたった光の反射の精度、と思ってよいかと思います。数字が大きいほど、きれいな反射光が演出できますし、陰影のディテールも細かくなりますが、デフォルトの数値は高すぎます。
キャッシュスレッシュホールドの数値は以前のバージョンの前、後という区別がなくなりましたが、それ以降のマニュアルには詳しい解説がないので、以前のままの意味ととらえて良いかと思います(以前の前後は、共に同じ数字になるように設定されたと推測しています)。
数字はピクセル数です。1ピクセルの明暗を決定するために直径何ピクセルの範囲の情報のキャッシュを利用するか、という数字です。
大きいほど計算は速くなりますが、広い範囲の計算結果を参照して計算を省略するようになるためなので、結果も曖昧になるばかりか、時にしみのような陰影のムラが出ることが有ります。この場合は陰影が汚くならないように試行錯誤するしかありません。
また、キャッシュヒット数、キャッシュサンプル使用角度の値との増減の組み合わせによっても結果が変わります。
ここが一番難しいところで、この数字がベスト、という決定打はありません、物件によっていろいろやってみてください。
また、テストレンダリングを小さいサイズでレンダリングし、最終レンダリングで印刷解像度の画像を、という場合、最終レンダリングサイズとテストレンダリングのサイズの差に合わせて、数字を大きくしないと、同じ見た目の結果になりません。 単純にピクセル数ですから、レンダリングサイズのピクセル数の比率に合わせて設定しましょう。
キャッシュヒット数とは先ほどのキャッシュスレッシュホールドで参照する値を、いくつ見るか、という問題で、多いほど正確な結果を得られます。計算を速くするためにキャッシュスレッシュホールドを大きくすると、その分この数値も大きくしないと、ムラの原因にもなります。
キャッシュサンプル使用角度は、主に曲面の陰影を計算する際に、参照する計算結果の範囲を限定することで、より正確な省略をしようとする物です。目立つ曲面がないような場合は、大きい数字にしてもあまり問題ないかと思います。曲面の陰影にムラが有り、結果が汚い場合等は、この数値を小さくするといいかと思います。
■05
03の結果へ戻ります。ダミーライトはないですが、天井もほんのり明るくなっています。
しかし、反射が1回に設定されているため、まだ不自然です。
ここで、反射の回数を3回に上げてみましょう。
計算時間も若干延びますが、格段に奇麗になりました。2回でもその効果はもちろんありますが、3回くらい反射させないと、天井面が必要なほど明るくなりません。2回と3回の計算時間の差はそれほどでもないので、時間が許せば3回にしたいところです。
この連載用に作成したモデルデータをここでダウンロードできます。
( 注意 ) 下記のデータは、STRATA 3D CX 5.5Jで作成されています。
■06
天井のムラが顕著なので、キャッシュヒット数を12から30に上げました。
ムラは完全には消えませんが、滑らかにはなりました。
この連載用に作成したモデルデータをここでダウンロードできます。
( 注意 ) 下記のデータは、STRATA 3D CX 5.5Jで作成されています。
【レイディオシティ反射の上限】
光が何回反射するか、という数字です。ポイントライト、スポットライトから放射される光が、面に当たって一回目の反射です。
ライトドームを使う場合、ドームから放射される光が1回目の反射光扱いになります。したがって、2以上の数字を入力しないと、
ライトドームからの光は反射しません。オブジェクトにグロー値を設定した面も、光源として扱われますが、同様に面から放射される時点で一回目の反射光となります。
【レイディオシティレベル】
反射する光が、どのくらいの強さで反射するかを変更できます。しかし、1以外の数字にすると、どんな空間でも不自然になります。
しかし、床が暗めの素材であること等から、天井面への反射が不足して暗く見える場合等、このモデルでもこの数値を1.2程度に設定すると天井が明るくなっていいかもしれません。明るい部分からの反射も1.2倍になってしまうので、注意してください。
【シャドウサンプル】
レイディオシティでは、光源の大きさが設定できます。ポイントライトで光源半径を500mmにすれば、500mmのグローブ球が
発光しているような効果を得られます。
光源が大きければ、その分、影のエッジのぼけも大きくなります。この数値はその際の影のぼかしをどの程度高品質にするかという数値です。数値を下げると、影は数字分の段階が出てきます。光源半径の範囲に、ライトをいくつもおいて計算するのと同じです。
しかし、シャドウ確率サンプリングのチェックを入れることで、影のむらを粒状に変化させることが出来ます。 計算時間を優先して、この数値を小さくする場合は、確率サンプリングを有効にした方がいいでしょう。
しかし、有効にすることで計算時間は増大します。サンプル数を上げるか、確率サンプリングを有効にするか、試行錯誤する必要があるかもしれません。
【反射/透明ブラーサンプル】
レイディオシティでは、反射してオブジェクトに映り込む部分だけをぼかしたり、透過するオブジェクトの向こう側だけをぼかしたりできます。
これにより、磨りガラスのような表現や、金属に鈍く映り込む様子等を表現できますが、計算時間はそれなりに増大します。
計算時間を優先するならば、レイヤー別に書き出して後からフォトショップで加工する方がいいでしょう。
この機能を使う際には、利用したいテクスチャで、スムースネスのプリセットメニューから、ブラー 反射/透明度(両方でも)にチェックを入れないと有効になりません。後から付けた機能とはいえ、わかりずらいですね…。数字はぼかす際のピクセル数のようです。
ぼかす方向はコントロールできません。
■08
レイディオシティのレンダリング設定はどうしても文章で説明しても分かりにくいので、極力簡単な文章で表現してみました。
あまり正確な表現ではないかもしれませんが、私の理解力の問題もあるかとは思います。
以後のSTEPでは、PART1で作成した室内のパースモデルを利用して、レイディオシティで仕上げていきましょう。
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