さらに演出ライト/マイナスライトを利用した陰影の演出
マイナスライトを使った陰影の演出というタイトルにしましたが、マイナスライト、というツールが存在するわけではありません。
STRATAはバージョン2.0からライトの明るさが0〜100までという制限がなくなりました。つまり100以上の数字は、もちろん、マイナスの数値も設定できるようになりました。このことにより、特定の部分を暗くする設定がライトで出来るようになったということです。とは言え、私もつい最近まであまりこの機能を積極的に利用してはいませんでしたが、巷にあふれるラジオシティ法を使って計算された照明の効果を見ていると、今までの自分のパースに足りないものが見えてきました。その回答の一つがこのやり方です。
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たとえば真っ白な3000mm角の中にstep08までに作ったベースライト、床反射ライトを1灯づつ設置するとこんな感じです。
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しかし、部屋の真ん中に1灯だけのライト、というのはあまりない状況です。4灯並べて部屋もちょっと大きくしましたが、このような状況でしょう。
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天井面がフラットになりすぎている気がします。そこで、点光源の明るさをマイナス20くらいに設定し、間接照明の感覚で、300mmピッチくらいで壁の外側に並べます。
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レンダリング結果は右図のようになります。
どうでしょうか?天井面の隅が若干暗くなってより現実に近くなったように思えますし、立体感も増しています。もちろん、床からの反射ライトをもっとこまめにコントロールしてやれば、同じことができますが、どうしてもそれだけではできないこともあります。
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たとえばこの四角い部屋の中に赤いテーブルを置きます。通常のレイトレでは左の画像ですが、このマイナスライトを家具の中に仕込むことで右の画像になります
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反射による映り込みだけでは表現しきれない、色の映り込みがある程度疑似的に表現できます。ここでポイントは、ライトには赤の反対色を付けることです。
これにより、壁面は赤くなり、かつ白い部分より暗くなるのです。
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これをプラスの明るさの赤いライトにするとどうなるか?というと図の比較のように、白い壁よりも明るくなり、赤の色も薄くなります。
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さらに、ポイントライトに壁面のBUMPに使ったノイズ画像を光源マップとして使用します。
左がノイズマップあり、右がなしです。WEBのサイズでは分からないと思いますが、ノイズを使わなかったほうは、単純に壁面が薄いピンクですが、使ったほうは壁面のバンプに合わせてノイズマップによる微妙な光の濃淡ができます。本当に微妙な違いですので、違いを感じない場合はマップを外しましょう。確実にレンダリング時間はマップありのほうが長いです。この場合のように、ノイズがかかった壁面に当たる光では効果が実感できないかもしれません。実際、私ももっと違いを再現できるかと思ったのですが、思いの外変わらないです(笑)。
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もう一つのポイントは、やり過ぎないことです。凹凸のある部分全てにさまざまな設定でこれをやるのが正しいかもしれませんが、全てに正確にやろうと思っても限度がありますし、そこまで必要ならばラジオシティ計算の使えるレンダリングソフトを使うべきでしょう。ここでは、ポイントを絞って、平面的になりがちな壁面や天井面の表現力を若干高める、というくらいの方法です。
STEP08までのモデルに、この方法でノイズなし、色設定なしのマイナスライトを設定した状態です。(右図)
赤いボックスがマイナスライトです。並べ方にルールもなにもありませんが、弱めに設定したものを細かいピッチで並べるほうが、うまくいくようです。この設定については現在私も試行錯誤してやっています。物件ごとに変えていますが、あまり細かくシェイプを分けずに、2〜3種類で収めて、強度はピッチや壁面までの距離で調整するのがいいようです。はっきりと色を使う場合は、もちろん何種類も出てくると思いますが、先程の赤い机のように、よほどはっきりとした色移りがある場合以外にはあまり色を多用しないほうがいいようです。
ペンダントの根元やイスやテーブルの足、といったあらかじめフラットな面に接するのが分かっているシェイプには、あらかじめこのマイナスライトを仕込んでおくとより簡単です。あとは壁と天井面、床面との稜線にそって配置すればいいかと思います。
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たとえばこの四角い部屋の中に赤いテーブルを置きます。通常のレイトレでは左の画像ですが、このマイナスライトを家具の中に仕込むことで右の画像になります。
さて、ここまでお付き合いいただいて、あなたも私と同じパースは描けるようになりました。私もここまで出来るようになるまで何年もかかっています。でも、このやり方を見つけるのに何年もかかりましたが、知っているあなたは少しの時間で追いついたはずです。手書きなら何年もかかったことを習得するには同じ年月がかかるでしょうが、CGならばやり方を教えてもらえば、10年かけた人も1ヶ月の人も同じです。それだけ、多くの人にチャンスがあると思います。ろくに絵も描けない私がパースで食べていけるのもCGならではです。みなさんも頑張ってください。
最後のようなことを書いてしまいましたが、まだ講座は続きます。
次回は夜景の演出について考えてみましょう。ライトの設定だけで簡単に夜景も作れるのもCGのいいところです。